梅雨まっただなか、
髪の毛がきれいにまとまってうれしい!
インスタのストーリーにのせちゃお。
おそらくそういう情報にハートをつけました。
よかった。元気そうで。
SNSは知人友人の生存確認の場でもあります。あの子と、これ以上すごく仲が良くなることはないかもしれないけど、無関係ではない。
そんなバス停での時間。雨上がりは緑の匂いがして目にも鮮やか。
うれしいよね。いろんなことがうれしい。それをあなたが教えてくれたことがうれしい。
初夏はうれしい季節です。
バスを降りたところに、よく知った制服を着た女の子が楽しそうに歩いてきました。緑の単語帳も、同じものを使っていたことがありました。
よかった。元気そうで。全然知らない人ですが。
きっと母校に行ったとて、どの生徒も知らないしどの先生も知らない。自分とはもはや何の関係もない。それでも少しは気にかかるものです。
じっと見ていたわけではないんですけど、その子が手にしていた単語帳を急に閉じたので不安になる。
あんなに、制服を着た自分をだれかがみているというのがこわかったのに、
今、一瞬とはいえ、私が眼差す側にいなかったか!
インスタのストーリーは誰が見たかわかるからいい。
さっきのインスタの子は、そう言ってました。
誰が眼差したかわかるからいい、ってことでもある。その匿名の相手、正体は誰かわからないかもよ?と聞いた私は微かに「誰が誰かなんて匿名でも全部わかってるよ」なんておそろしい答えを期待していました、それくらい堂々としていたから。しかし彼女は淡々と「鍵アカやし」と答えた。そうね。知ってる人しか承認しないよね。
見てもらう人を管理できる。けど、人がどうあなたをまなざすかまでは、わからない。
みんな期待しながら、怯えながら、やっぱりそれでも見てほしい人は見てほしい。なにかを。
突然髪を染めた友人に「かわいい、似合う」と言ったらすごく嫌な顔をされてしまったことを思い出して胸が痛みました。駅のなか、旅に出るわけでもないのにみどりの窓口の前だった、そんなことまで覚えている。
私は気持ち悪かったかな、言い方が派手だったか?逆に、じめじめしていたか?、もしかして何かのハラスメントだったかなあ、と悩みましたが、あれも、たまたま、そうなってしまっただけかもよ。彼女の髪色と嫌な顔の真意は彼女にしかわからない、彼女は何も考えていなかったかもしれない。私の褒め言葉が意味するものはわたしだけが知っている、私だって何も考えていなかったかもしれない。
人間が人間を勝手に見て勝手な感想を述べてしまったからこういうことに。
と思ってわたしはそれから人にかわいいと言うのが怖くなってしまいました。気にしすぎてしまいました。
人を見ることに対しての感覚も、見られることに対しての感覚も、人それぞれ……。
どんな人にだってなれるし、どんな人であってもいい、と思ったらちょっと気が楽です。
いつか髪を、たとえば緑に染めて、誰かが「かわいい!」と言ってくれたら「でしょ!」と返して、ピースする?
そんなことだって、あるかもしれません。